【独立会計士インタビュー】グローバル人材研修を支援|Altus Leap江上さんの仕事・お金・苦労のリアル

この記事は以下の方におすすめ
・これから独立を検討している公認会計士
・独立したばかりで、仕事や収入に不安がある会計士
・派手な成功談ではなく、独立して数年のリアルな話を読みたい方
・公認会計士になった後のキャリアを知りたい受験生
・独立会計士の仕事の取り方、苦労、自由の実態を知りたい方
とむやむくん独立5年目くらいまでの独立会計士のリアルを聞く、「とむやむくん独立会計士インタビュー」。今回は、2021年に独立した江上 徹さん(X:imageruto)にお話を伺いました!
・30代で働きながら公認会計士試験合格
・修了考査合格、公認会計士登録済、現在独立、転職エージェントとしても活動
・SNSフォロワー1万人超アカウントで情報発信中
江上さんは、監査法人と事業会社での経験を経て独立。
現在は、監査法人の非常勤、会計・内部統制等のコンサルティングに加え、グローバル人材育成研修「Altus Leap」を育てています。
独立前にどこまで仕事を作っていたのか。初年度の売上はどうだったのか。紹介だけで仕事は広がるのか。安く受けすぎた仕事や、もう受けないと決めた仕事はあるのか。
今回は、仕事・お金・営業・失敗・孤独、そして独立のために始めた事業が思ったほど早く育たなかった現実まで、かなり率直に聞きました。
印象的なだったのは、江上さんは「もう一度同じ地点に戻っても独立する」と即答なさっていたことです。
その一方で、独立から約5年たった現在地には厳しい点数を付けています。売上を作れたことと、自分が育てたい事業が軌道に乗ることは別だったからです。
独立を考えている会計士はもちろん、すでに独立して「目の前の仕事に追われて、やりたかったことが進まない」と感じている方にも参考になる内容です。
本記事は成功や売上を保証する内容ではありません(お分かりかとは思いますが)。参考程度に、でお願いします。また、実際にインタビューはかなり長時間行っているのですが、編集都合と長さの関係で一部割愛させていただいております(インタビューを受けてくださった方、申し訳ございません)
今回の独立会計士インタビューで分かったこと
| 読者の疑問 | 江上さんの実体験から見えた答え |
|---|---|
| 独立後の仕事はどこから来た? | 監査法人時代の先輩、前職、過去の取引先などからの紹介・継続業務が中心 |
| 独立前に何を準備した? | 半年〜1年ほど前から周囲へ独立の意思を伝え、監査法人非常勤などの仕事を確保 |
| 営業が苦手でも大丈夫? | 話術より、返信の速さ、誠実さ、ミスを隠さない姿勢が大切 |
| すぐに自分の事業へ集中できた? | 独立初期は他の仕事が忙しく、独自サービスへ本格的に取り組むまで時間がかかった |
| 自由になった? | 休日と平日の境目は薄くなったが、時間を自分で配分しやすくなり、総労働時間は減った実感がある |
| 独立前に積みたい経験は? | クライアント対応や人の管理に加え、サービスを受けてお金を払う側の経験も役立つ |
江上さんの話から分かるのは、「独立した日から営業を始める」のでは遅いということです。
退職前から関係者へ意思を伝え、生活を支える仕事と、自分が育てたい仕事を分けて準備することが重要です。
今回のゲスト|Altus Leap 公認会計士・江上 徹さん
とむやむくんまず、これまでの経歴と、現在のお仕事を教えてください。
江上さん:
大学卒業後は、キヤノン株式会社の経理本部でキャリアを始めました。
働きながら公認会計士試験の勉強を進めて、合格後はあずさ監査法人の国際部門で、主に海外クライアントを担当しました。
その後は株式会社電通へ移り、連結決算、J-SOX、グループ経営管理などの仕事をしていました。
監査する側だけでなく、事業会社で決算を回す側、外部の専門家へ仕事を依頼してお金を払う側も経験しています。
2021年に独立して、今の仕事は大きく3つです。1つ目がグローバル人材育成研修の「Altus Leap」、2つ目が監査法人の非常勤、3つ目が会計や内部統制に関するコンサルティングです。
とむやむくん「自分はこういう相談に強い」と一言で表すと、どんな会計士ですか?
江上さん:
「グローバル×人材育成」ですね。
監査、事業会社、海外関連業務で積んだ経験を、企業の人材育成につなげています。
Altus Leapは英語だけを学ぶ研修ではない

とむやむくんAltus Leapは、一般的な英語研修とは何が違うのでしょうか?
江上さん:
この研修は、「単に英語を話せるようにする研修」ではありません。
英語、ファイナンス、文化理解を組み合わせて、海外の現場で本当に仕事を任せられる人を育てるプログラムです。
海外で仕事をするには、数字を読めないといけませんし、文化の違いも理解しないといけません。答えが一つではない状況で自分なりに判断して、その理由を英語で説明する力も必要です。
対象は経理部門だけではなく、海外へ出る営業や開発などの現場の方も想定しています。それから、海外へ行く人だけでなく、日本にいながら海外拠点を管理する人もすごく大事です。
海外進出が決まってから、急いで英語を話せる人を集めても、その人が自社の事業や商品を理解しているとは限りません。
企業が本気で海外展開を推進するなら、時間をかけて社内の人材を育てておく必要があると思っています。
コースは2コースあり、どのクラスも講義後には実践的な課題を与え、講義外でも本気で取り組んでもらっています。

Altus Leapは企業向け(海外展開をしている・今後したい企業)になっており、現在は個人への提供は行っておりません。
なぜ独立した?40代で「挑戦しない後悔」を意識
とむやむくん会社員として十分な経験もあって、ご家族もいるなかで、なぜこのタイミングで独立しようと思ったんですか?
江上さん:
自分で会社をやってみたいという気持ちは、実は学生の頃からぼんやりとありました。ただ、私も普通の会社員家庭で育ったので、現実的な選択肢としては考えず、そのまま会社員を続けていました。
40代に入った頃から、「このまま独立せずに会社員を続けていいのか」という気持ちがだんだん大きくなりました。
うまくいかなかったとしても、60代、70代になったときに、「あのときなら挑戦できたのに、なぜやらなかったんだろう」と後悔すると思ったんです。
ちょうどその頃、会社でキャリアの棚卸しをするワークショップがありました。そこで適性を見たときに、「人を育てること」が自分の資質として出たんですね。
もともと英語と会計を掛け合わせて、グローバル人材を育てるようなことができないかと考えていたので、「やっぱりやろう」と決める最後の一押しになりました(それが今やっているAltus Leapです)
とむやむくん独立前に一番怖かったことは何でしたか?周囲から止められませんでしたか?
江上さん:
一番怖かったのは、やっぱりお金です。家族もいるので、そこは現実的に考えました。
ただ、家族からは止められませんでした。「やればいいんじゃない」という感じで、前向きに受け止めてもらえたのは本当に良かったです。
そういったこともあり、例えば独立直前に「やっぱりやめよう」と思った瞬間も、私の場合はありませんでした。
独立時点で仕事はあった?半年〜1年前から準備
とむやむくん独立する時点で、仕事はすでにあったんですか?何もない状態からのスタートだったのかが気になります。
江上さん:
仕事はありました。独立を心に決めてから、監査法人時代の先輩や、これまで仕事で関わった人に「独立しようと思っています」と伝えていたんです。独立の半年から1年くらい前には動き始めていました。
今も続けている監査法人の非常勤は、独立前に決まっていましたし、前職からも、独立後に引き続き担当してほしいと言われていた仕事がありました。
私が担当していたのは、連結決算や海外のJ-SOXなど、会計の知識だけでなく英語でのやり取りも必要な業務です。少し専門的なので、結果として他の人がすぐ入れない領域になり、独立後の仕事につながっていると感じています。
企業内会計士が独立する場合、元の会社から仕事を受けるのは一つの王道だと思います。
会社側も、その人が何をできるか、社内の事情をどこまで分かっているかを知っているので、安心して頼めます。
これから独立するなら、前職とは絶対に「喧嘩別れしない」方がいいです。最初の仕事は、これまで築いてきた信用や関係から生まれることがあります。
とむやむくん生活費は何か月分貯めておいた、とかはあったんですか?
江上さん:
資金面については家族もありますので、当然考えていました。
この先の生活を続ける中でどれくらいのお金が必要になってくるのか、どのくらい収入がなければ厳しいのか、等は厳密にシミュレーションしました。
その上で、独立後に想定している仕事でどれだけ収入がありそうかを考えて独立したので、生活費を何か月分貯めて独立した、というよりは、仕事を先にある程度決めてから独立した、という方が近いです。
江上さんはしっかりした方なので万全の準備をされて独立されていますが、当然資金ショートということは独立する上で考えなければいけません。ある程度の貯蓄は当然必要で、私自身ももちろん考えて独立しました。
独立初年度は暇ではなく、むしろ忙しかった
とむやむくん独立初日はどんな感じでしたか?少しゆっくりできたのでしょうか?
江上さん:
いや、最初からものすごく忙しかったです。
私が独立するとき、ちょうど前職の会社が、ある新しい子会社を設立中だったのですが…
その子会社の経理回りの立ち上げを受託し、立ち上げ後もそのまま運営に関わっていたので、銀行口座を開く、印鑑を作る、社内のルールを整えるといったところから全て関与していました。
それに監査法人の非常勤や、自分で受けた仕事も重なり、会社を辞めた最初の平日も、普通にずっと働いていましたね…。
とむやむくん最初に請求書を出して、入金されたときのことは覚えていますか?
江上さん:
鮮明に覚えています。自分で請求書を出して、その金額が本当に自分の口座へ入っているのを見たときは、すごく感動しました。会社員時代にはない感覚でした。
とむやむくん独立の目的だったAltus Leapにも、すぐ取り組めたのですか?
江上さん:
そこは全然できませんでした。最初の仕事が忙しくて、Altus Leapへ本格的に手を付けられたのは、独立してから約2年半後です。
頭の中ではカリキュラムを考えていましたが、目の前に納期のある仕事があると、どうしてもそちらが先になります。
人材育成をやりたくて独立したのに、最初の2年ほどはそれまでの会社員生活とあまり変わらないくらい、他の仕事をしていました。
これは私も感じていることなのですが、目の前の売上を作る仕事と、将来の柱を育てる仕事は別です。
独立初期に仕事が多いことは安心材料ですが、自分の事業へ使う時間まで先に確保しないと、構想が後回しになる可能性があります。
仕事はどう取った?紹介が中心でも営業より信頼が大切
とむやむくん結局、独立後の仕事はどこから来たんですか?営業が苦手でも独立できるのか、かなり聞きたいところです。
江上さん:
今のところは、紹介、人脈、知り合い経由が一番多いです。監査法人時代の先輩が紹介してくれたり、一度仕事をした方が別の方を紹介してくれたりします。
なぜ紹介してもらえるのかというと、一生懸命やってきたことに加えて、私には「グローバル」という少し分かりやすい色があるからだと思います。
英語や海外対応を含む相談になったときに、思い出してもらいやすいのかもしれません。
自分が「何に強いか」は明確にしておいた方がいいです。独立したんでなんでもやります!といって名刺を配っても埋もれてしまいます。明確な強みを持っていれば、その分野で困ったときに、そういえばそんな人がいたな…と思い出されやすいです。
とむやむくん紹介以外に営業もしていますか?一番効果があった方法も知りたいです。
江上さん:
もちろんしています。Altus Leapについて、知り合いから人事の方を紹介してもらい、「こういうことをやっています」と説明することもあります。
受注につながる確率でいえば、今のところ一番効果があるのは紹介です。ただ、紹介はどうしても知り合いの範囲を超えにくく、広く届けるのが難しいんですよね。
そこで今は、ホームページを作ったり、SNSを始めたり、交流会やイベントへ行ったりしています。
イベントから直接仕事につながった例は、現時点ではまだありません。それでも、どこから仕事が来るか分からないので、接点は作るようにしています。
人脈ゼロなら、最初の顧客をどう探す?
とむやむくんもし今、人脈ゼロの状態から独立するとしたら、最初の顧客をどう探しますか?
江上さん:
まずはフォーラムや交流会へ行って、「自分はこういうことをやっています」と分かる資料を配ると思います。SNSでも発信するでしょうね。
ただ、本当に人脈がゼロの人は少ないと思うんです。監査法人や事業会社で働いていれば、一緒に仕事をした人やクライアントがいます。まずは、これまでの関係を見直す方が現実的です。
特に企業内会計士なら、元の会社から仕事を受けるのは王道だと思います。発注する会社側も、その人が何をできるか分かっているので、お互いに安心です。
営業トークが上手でなくても独立できる
とむやむくん営業トークが苦手な会計士でも、独立できますか?
江上さん:
できると思いますよ。私も営業トークが上手だとは思っていません。
お金を払う側からすると、トークが上手かどうかより、「この人は信頼できる」「一生懸命やってくれている」と感じられるかの方が大事です。
レスポンスを早くする。ミスをしたら変に隠したり、言い逃れしたりせず正直に対応する。
専門知識はもちろん必要ですが、独立した最初のうちは、むしろそういう誠実さの方が仕事の継続につながると思います。
私も、紹介で仕事を頂くことが結構ありますが、やはりスキルよりも「誠実に」「一生懸命」「レスポンス早く」が何よりも重要だと感じています。ほんっっっっっとうに大事です。
初年度の売上は?順調でも想定どおりではなかった
とむやむくん少し聞きづらいのですが、初年度の売上はどうでしたか?独立前に思い描いていた仕事との違いも教えてください。
江上さん:
初年度の売上は、会社員時代の年収を上回りました。ただ、これはかなり珍しいケースだと思います。
新しい会社の立ち上げと運営、監査法人の非常勤、前職からの継続業務、それまで仕事で関わった方から依頼された案件が、最初の年に一気に重なったんです。
私がこちらの記事でも書いている通り、大半の独立会計士は一年目に年収を落としています。なので上回るというケースは確かに珍しい、すごい。
とむやむくんその後の売上はどうですか?「この先も食べていけるのか」と不安になることはありますか?
江上さん:
最初に大きく立ち上がって、その後は少しずつ上下しながら、今のところは比較的同じくらいで推移しています。
でも、「この先も食べていけるのか」という気持ちは今でもあります。来年、再来年がどうなるかは分かりませんし、今ある仕事がいつまでも続く保証はありません。
特定の取引先がなくなったら困る状態なので、収入源を分散しないといけないことは分かっています。
ただ、それが簡単にできるなら誰も苦労しませんよね。Altus Leapの継続顧客を増やして、もっと安定させることが今の課題です。
| 独立前の想定 | 実際に起きたこと | 記事から得られる教訓 |
|---|---|---|
| 独自サービスを早く育てる | 生活を支える他の仕事が忙しく、着手が遅れた | 事業開発の時間を先に確保する |
| 独自サービスに顧客が増える | 研修の反応は良くても、継続契約は簡単に増えなかった | 良い反応と有料契約を分けて考える |
| 紹介で仕事を得る | 受注につながりやすいが、広がりには限界がある | Web・SNS・イベントも並行する |
| 頼まれた仕事を幅広く受ける | 安価で時間のかかる業務や、負荷の高い代替業務もあった | 単価だけでなく時間と将来性で受任を判断する |
安く受けた仕事は、善意だけでは続かなかった
とむやむくん独立したばかりの頃、安く受けすぎた仕事はありましたか?
江上さん:
ありました。独立初年度に、「会社員ではなくなったから、いろいろできる」と思って、知人が働く小規模な組織の事務作業を手伝ったんです。
例えば、名簿のデータから必要な書類をまとめて作るような仕事です。
私にとっては普段使っているExcelの延長でしたが、現場では困っていました。会社の中では「このくらいは普通にできる」と思っていたスキルにも、外へ出ると需要があるんだと気付きました。
ただ、金額はほぼボランティアに近く、思ったより時間もかかりました。他の仕事が忙しくなったこともあって、1年くらいでやめました。
単価の低い仕事が悪いというわけではもちろんありません。
応援したい相手のために引き受ける仕事もあります。ただ、通常の事業として続けるなら、作業時間、責任、得られる経験、今後の展開まで含めて条件を決める必要があります。
「できるけれど、もう受けない仕事」を決めた
とむやむくん反対に、「これはもう受けない」と決めた仕事はありますか?
江上さん:
会社の経理責任者が急に辞めることになって、次の方が来るまで代わりに入る仕事を一度受けました。でも、これは今後やらないと決めています。
そのポジションに入ると、毎日朝から晩まで現場にいて、突発的な残業にも対応する働き方になります。そうすると、そもそも何のために独立したのか分からなくなってしまいます。
経理責任者の代替ができる方は、私以外にもいます。
でも、Altus Leapのような「グローバル×人材育成」の仕事をする人は、それほど多くないと思っています。だから、できる仕事を全部受けるのではなく、自分にしかできない仕事へ時間を使うようにしています。
独立後の失敗と先行投資|引継ぎ不足と研修アプリ

時間がなくても、引継ぎで遠慮しない
とむやむくん独立してからの失敗や、「もっとこうすればよかった」と思うことはありますか?
江上さん:
大きな失敗というほどではありませんが、さきほどの経理責任者の代替業務では、前任者が辞めるまで時間がなく、十分な引継ぎを受けられないまま始めました。
そうすると、翌月や決算期になってから、処理の誤りが少しずつ見つかるんですよね。「あのとき、もっときちんと聞いておけばよかった」と思いました。
(もしこういった前任からの引継ぎの業務なら)時間がない案件ほど、引継ぎで遠慮しないことが大事だと思います。
独自サービスには、売れる前からお金がかかる
とむやむくんお金や時間を使った、大きめの先行投資はありますか?
江上さん:
Altus Leapの受講者が、講義と次の講義の間に毎日練習できるWebアプリを外部へ依頼して作りました。
最初から完璧なものはできないので、「ここを直してほしい」と修正を重ねていくうちに、費用もかなり積み上がりました。
2時間の講義を受けるだけでは、なかなか身に付きません。「次回まで勉強してください」だけでは続かないので、毎日何を何分やるかまで具体的に示すためのアプリです。
今は英語の練習が中心ですが、将来はファイナンスや文化理解にも広げたいです。Altus Leapが続く限り役に立つ投資ですが、サービス自体がうまくいかなければ回収できないので、独立後の先行投資にはそういうリスクがありますね。
サービスが売れなければ、開発費は回収できません。
それでも、成果を出せるサービスにするためには先にお金を使う場面があります。独立後の「経費」は、パソコンや事務所代だけではなく、自分の商品を形にするための投資も含みます、なので、何をするかにもよりますが、結構かかることもあります
とむやむくん契約書を作らずに後悔したことはありますか?
江上さん:
今のところ、契約書について大きく後悔した経験はありません。Altus Leapでも、契約条件を含めてきちんと書面を作るようにしています。
独立すると本当に自由?オンとオフは「まだら」
とむやむくん独立すると本当に自由になりますか?旅行中も連絡を見るのか、会社員時代より忙しいのかも率直に聞きました。
江上さん:
旅行中も仕事の連絡は見ますし、返信もします。週末にホームページのコラムや専門メディアの記事を書くこともあるので、会社員時代のような「土日は休み」という感覚はあまりなくなりました。
ただ、今来るメールは自分が選んだ仕事に関係するものなので、確認すること自体は苦痛ではありません。
会社員時代には、自分と直接関係のない会議やメールへ入ることもありましたが、今は自分の時間を顧客のために直接使えます。
平日と休日が白黒ではっきり分かれるのではなく、オンとオフが「まだら」になった感覚です。平日の空いている時間に髪を切ったり、疲れたら昼寝をしたりできます。
毎日何かしら仕事はしていても、実際に働いている合計時間は会社員時代より減っていると思います。家族と過ごす時間も明らかに増えました。
と、語っている江上さんはとてもいい顔をしていたのが印象的でした。やっぱり自分の理想とする働き方を実現できるのは、独立のいいところですよね。
独立初期の孤独と、外へ出る習慣
とむやむくん独立して、孤独を感じることはありますか?体調やメンタルを保つためにしていることも教えてください。
江上さん:
ありますね。在宅で仕事をしていると、一日中家から出ないことがあります。会社なら誰かと昼食へ行くこともありますが、独立すると自分から動かない限り、人と話さない日ができてしまいます。
独立初年度は、会社の立ち上げ、監査法人の非常勤、自分で受けた仕事が重なって、夜中の3時頃まで働き、少し仮眠してまた仕事をするような時期がありました。
ずっと家にいて運動もしない生活が続き、気分が落ち込んで、やる気が出ない時期があったんです。「このままでは危ない」と思って、まずは昼食を外で取ることから始めました。
そこからCPD受講などで外へ出る用事を作って、人と話すようにしました。少しずつ気持ちが戻ってきて、今は週に何回か歩いたり、家で筋トレをしたりしています。
いきなり運動を始めるのは難しいので、最初は「昼食だけでも外へ行く」でいいと思います。独立したら、意識して外へ出て、人と話すことが大事ですね。
どんな会計士が独立に向く?専門知識だけでは足りない
とむやむくん逆に、どんな人はもう少し勤務を続けた方がいいと思いますか?
江上さん:
専門知識だけに強いプライドを持っている人は、もう少し勤務経験を積んだ方がいいかもしれません。
スタッフやシニアの頃は、難しい会計論点を担当したくなりますよね。ただ、仕事は専門知識だけでは完結しません。立場が上がるほど、クライアントとの関係や、チームのことも考える必要が出てきます。
コミュニケーション能力の重要さ、というのを江上さんはかなり強調されていました。先ほども書いたような「誠実さ」みたいなところとも関わってきますが、知識だけ、よりも真面目できちんと誠実に仕事をしてくれる。やっぱり人として魅力的な人でないと仕事を頼みたくないし任せられない、というところは人間だから当然あると思います。
マネージャー相当の経験が役立つ
とむやむくん主査やマネージャーの経験は、独立前にあった方がいいでしょうか?
江上さん:
個人的には、できればマネージャー相当の経験はあった方がいいと思います。
マネージャーになると、クライアントとの関係を調整したり、チームを管理したり、部下を評価したり、自分も評価されたりします。難しい状況で判断する経験も増えます。
監査法人ごとに昇格制度が違うので、「何年働けば十分」とは一概にいえません。年数よりも、顧客と人に責任を持つ立場を経験したかどうかが大切です。
サービスを受け、お金を払う側も経験する
とむやむくんほかに、独立前に経験しておくとよいことはありますか?
江上さん:
できれば、監査やコンサルティングを受ける側、お金を払う側も経験した方がいいと思います。
私は監査をする側と受ける側の両方を経験しました。お金を払う側になると、「この対応に、なぜお金を払わないといけないんだろう」と感じることもあります。
専門性が高ければそれだけでいいわけではありません。返事を早くする、相手の事情を理解する、誠実に説明するといったことが、独立後の顧客対応ではすごく大事です。
今はどんな仕事を増やしたい?Altus Leapへの挑戦
とむやむくん今後、特に増やしたい仕事は何ですか?どんな企業からの相談を歓迎していますか?
江上さん:
海外展開をしている企業、これから海外へ出ようとしている企業、海外事業が思うように進んでいない企業の人材育成を増やしたいです。
海外へ行くことが決まってから、急いで英語ができる人を集めるだけでは間に合いません。自社の事業や商品を理解して、数字を読み、現地の文化も踏まえて判断できる人を、時間をかけて育てる必要があります。
語学研修だけで終わらせず、本気で海外を任せられる人材を育てたい会社であれば、力になれると思います。
知人への試行から、社外での手応えへ
とむやむくんAltus Leapを形にするまで、どのように内容を作っていったのですか?
江上さん:
最初は前職の知人に、「お金は取らないから一度受けて、率直な意見をください」とお願いしました。その感想を聞きながら、カリキュラムを何度も直しました。
ただ、知り合いから良い反応をもらえても、本当に第三者へ通用するかは分かりません。その後、これまで面識のなかった企業でトライアル研修を行い、受講者の反応がとても良かったんです。
有料の継続契約にはつながりませんでしたが、「もう少し改善して営業を続ければ、必要としてくれる企業はある」と手応えを持てました。
答えのないケースを判断し、英語で説明する
江上さん:
英語、ファイナンス、文化理解という知識だけではなく、判断や意思決定を鍛えるケーススタディも入れています。
グレーゾーンの事例を出して、「あなたならどう判断しますか」と考えてもらいます。そして、その判断理由を英語で説明してもらうんです。受講者にとってはかなり大変ですが、海外の現場では、正解が用意されていない状況で決める力が必要です。
講義と講義の間には、専用のWebアプリを使った練習もあります。2時間の講義を聞くだけでは身に付かないので、受講期間中に毎日取り組んでもらう設計にしています。
とむやむくん一緒に取り組みたい人や、紹介してほしい企業はありますか?
江上さん:
資格の種類にかかわらず、「日本企業がより一層グローバルに躍動するには、人を育てないといけない」という考えに賛同してくれる方とは、一緒に取り組みたいです。
海外実務や語学など高い力を持ちながら、育児などで仕事から離れている方もいます。そういう方に課題の添削や講義を手伝ってもらうなど、能力を生かせる関わり方も作りたいと思っています。
それから、本気で海外人材を育てたい企業があれば、ぜひ紹介していただきたいです。
もう一度戻っても独立する?答えは即答で「する」
とむやむくん今の状況になると分かっていて、会社員時代へ戻ったとしても、もう一度独立しますか?
江上さん:
また独立します。そこは迷わないですね。
一番良かったのは、大企業で感じていた板挟みや社内調整によるメンタル面のストレスが大きく減ったことです。今は自分の時間を、顧客のための作業へ直接使えます。
「誰かの役に立っている」という手触りが強くなって、仕事の充実感も増えました。独立前の自分が今を見たら、「表情が明るくなったね」と言うと思います。

とむやむくん今の自分に100点満点で点数を付けるなら、何点ですか?
江上さん:
50点です。生活の基盤は、監査法人の非常勤や継続業務で作れています。ただ、独立したときには、5年ほどたてばAltus Leapがもっと大きくなっていると思っていました。
実際には最初の2年ほどほとんど取り組めず、始めてからも継続顧客が簡単に増えたわけではありません。毎年依頼してくれる企業がもう少し増えて、事業が安定してくれば、もっと点数を上げられると思います。
とむやむくん最後に、これから独立する会計士へメッセージをお願いします。
江上さん:
衝動ではなく、いろいろ考えたうえで独立を決めたはずです。一生懸命やって、もし思うようにいかなかったとしても、会計士なら別の会社へ入るなど、働く道はあります。心配ばかりせず、思いっきりやってください。
独立公認会計士に関するよくある質問
- 独立会計士の仕事は紹介だけで取れますか?
-
江上さんの仕事は紹介や過去の関係者からの継続業務が中心です。ただし、紹介は受注につながりやすい一方で広がりに限界もあるため、ホームページ、SNS、イベントも試しています。
- 営業が苦手でも公認会計士として独立できますか?
-
江上さんは、営業トークのうまさより信頼が大切だと話しています。返信を早くする、相手のために動く、ミスを隠さず正直に対応するといった姿勢が重要です。
- 独立前に監査法人のマネージャー経験は必要ですか?
-
必須と断定はしていませんが、江上さんはマネージャー相当の経験を勧めています。顧客対応、チーム管理、評価、判断を経験しておくと、独立後の仕事に役立つという考えです。
- 独立すると会社員より自由になりますか?
-
江上さんの場合、休日と平日の境目は薄くなりましたが、働く時間を自分で配分しやすくなり、総労働時間は会社員時代より減った実感があります。仕事をしない自由というより、時間と仕事を選びやすくなる自由です。
- 独立前に生活費を何か月分用意すべきですか?
-
江上さんは生活資金を準備し、家族のライフイベントも考えたと話しており、何か月分というよりも、想定される支出に対する収入がこの先確保できるかどうか、ということを考えて独立なさっています。
- 独立初年度から会社員時代の年収を超えることはありますか?
-
江上さんは初年度に会社員時代の年収を上回りましたが、本人も珍しい例だと話しています。会社立ち上げ、監査法人非常勤、前職からの継続業務、独自案件が重なった結果であり、一般的なモデルとして再現できるとは限りません。
- 安い仕事でも、独立初期は受けた方がよいですか?
-
経験や関係づくりのために受ける選択はありますが、作業時間と責任を確認する必要があります。江上さんは、ほぼボランティアに近い事務支援へ想定以上の時間がかかり、他の仕事との両立が難しくなってしまいました。
- 独立後、自分がやりたい事業へすぐ集中できますか?
-
必ずしも集中できるとは限りません。江上さんは生活を支える仕事が忙しく、独立の目的だったAltus Leapへ本格的に取り組むまで約2年半かかりました。売上を作る時間と、将来の柱を育てる時間を先に分けておくことが大切です。
- 独立会計士は孤独になりやすいですか?
-
在宅中心の場合は、人と話さず一日を終えることがあります。江上さんは、外で昼食を取る、CPDへ参加する、歩く、筋トレをするといった小さな習慣から、人との接点と体調を整えています。
独立後に増えたのは、仕事の手触りと発信する機会
とむやむくんホームページ以外にも、記事の執筆をしているそうですね。どのようなきっかけだったのですか?
江上さん:
前職で関わった方から編集者を紹介してもらい、専門メディアでグローバル分野の記事を書くことになりました。
最初の連載が終わったあとも、自分から「次はこういうテーマで書けます」と複数の企画案を作って編集者へ送りました。その中から面白そうなものを選んでもらい、次の連載につながっています。
原稿料だけを見れば大きな売上ではありませんが、自分の名前や専門分野を知ってもらう機会になります。将来的には書籍も出したいですね。
独立後の発信は、それ自体の売上だけで判断しないことが重要です。
専門性を伝え、新しい人とつながり、本業の相談を受ける入口として考えると、コラムや寄稿の意味が変わって考えられるようになると思います。
まとめ|仕事があっても、やりたい事業がすぐ育つとは限らない
今回の江上さんの話から分かったのは、当然ですが、独立後の仕事は、独立した日から突然生まれるわけではないということです。
- 独立の半年〜1年ほど前から、周囲へ意思を伝える
- 非常勤や継続業務で生活を支える土台を作る
- 紹介に頼り切らず、Web・SNS・イベントも試す
- 営業トークより、返信・誠実さ・信頼を大切にする
- 目の前の売上と、育てたい事業の時間を分ける
- 外へ出て人と話す予定を、意識して作る
初年度から順調に見えても、独自サービスの成長が想定より遅れたり、特定顧客への依存が不安になったりします。
独立から約5年がたっても、江上さん自身の現在地は「50点」です。
これは失敗したという意味ではなく、自分が本当に育てたい事業を基準に、現在地を厳しく見ているからです。
それでも、「もう一度会社員時代へ戻っても独立するか」と聞くと、答えは即答で「する」でした。
独立に必要なのは、完璧な見通しではなく、失敗しても立て直せる土台と、目の前の相手に信頼してもらう行動です。
独立を検討している会計士は、「誰に独立の意思を伝えるか」「生活を支える仕事をどう確保するか」「育てたい仕事へ毎週どれだけ時間を使うか」から考えてみてください。
独立したばかりの会計士には、「想定どおりに進んでいないのは自分だけではない」と伝わればうれしいです。
受験生の方には、公認会計士になった先に、組織で働く以外にもさまざまなキャリアがあることを知ってもらえればと思います。
今回インタビューに応じてくれた江上さんの運営するAltus Leapはこちらです。
江上さんはXでも積極的にご発言なさっているので、よろしければフォローしてみてください!






